中村中さんの話ー2007年第58回NHK紅白歌合戦

昨年の大晦日は飲みに出てたので紅白歌合戦を見ていなかった。
モギケンさんのブログを読んでいたら、紅白の裏話が載っていた。

茂木健一郎 クオリア日記: 中居クンの判断
紅白のディレクターの方とお話する。
 途中、2分間押していて、
かなりまずい状態だったのだという。
 それでもちゃんと全曲が流れ、
最後に「螢の光」が歌えて
時間通りぴたりと終わる。


 それはやはり一つの奇跡としか
言いようがないんじゃないか。


現場で制作にかかわる人の
証言はずしりと胸に響く。


 「すごいと思ったのは、中村中さんの
ときなんですよ。
 あのとき、2分半押していて、
とにかく巻け、巻けと指示を出しても、
中居さんは顔を横に振って、
 言うことを聞かない。
 どんなに時間が押していても、
中村さんのエピソードだけは
きちんと話さないといけない、
 そんな風に中居クンが判断した
んでしょう。
 そして、その中居クンの判断は
正しかったと思います。
 あれが、今回の紅白で、一番
しびれた瞬間でした。」


恥ずかしながら私は流行の話題に疎く、中村 中(あたる)って名前だけ聞いたことがあって、どんなアーティストなのか全然知らなかった。
昨年の紅白で一番いい場面と書かれているそのワンシーンがどうしても見たくなって、動画を探してみたら、ここにあった。
以下、その動画をテキストにおこしたもの。

(敬称略)
ナレーション「中村中さん。22歳。今、注目を集めるアーティストです。中さんは男性として生まれ、性同一性障害でずっと悩んできました。そんな中で独学でピアノを学び、歌に自分の想いを託すようになってきました。そして今年、彼女の歌は多くの人の心に響きました。」


中居「はい改めまして中村中さんです。よろしくお願いします。」


中村「よろしくお願いします。」


鶴瓶「あの、中さんのお母さんから手紙が来てるんです。」


中村「そうなんですか?」


鶴瓶「ええ、じゃあちょっと読ませていただきます。
紅白歌合戦出場おめでとう。あなたは男の子として生まれたはずなのに、心は女の子。一生背負わなくてはならない重たい荷物を背負わせてしまいました。責任を、感じない日は一日もありません。でも、あなたはあなたのことばで、皆さんの心へ響く歌を歌っていけばよいのです。応援してます。母より』」


中村「ほんとに………ばかな人ですよ。いいんです私は…………こうして、生まれていますから。」


中居「いかがですか。お母さんの想いってのも、あるんじゃないでしょうか。」


中村「そうですね。あの…私はもしかしたら親不孝かもしれないけれど、私はこうして歌を歌ってずっと生きていくことが親孝行にもなると思うし…応援してくださっている皆様にこの場を借りて。本当にありがとうございます!」


中居「はい。それでは、スタンバイの方よろしくお願いします。
さあ歌っていただきますのはですね、彼女が15歳のときに、書いた曲なんですね。青春の迷いだとか戸惑いが歌にも表れているんではないでしょうか。
さあ、それでは参りましょう。中村中さん。「友達の詩」。どうぞ。」


別の記事にはこのようにありました。

http://www.ohmynews.co.jp/news/20071216/18576
MTF(生物学的には男性だが、精神的な性・性自認は女性で、女性として生きることを歩んでいる人)はかつてメディアでは「ニューハーフ」と呼ばれ、キワモノ扱いされてきた。しかし、当事者の地道な運動によって性同一性障害者は徐々に市民権を得ていき、2003年4月にはMTFであることを公言する上川あやさんが世田谷区議に当選し、同年7月に性同一性障害者の戸籍の性別変更を認める「性同一性障害者特例法」が国会で成立、2004年7月16日に施行された。


日本で公に男性から女性へ、女性から男性へ戸籍を変更できるようになったわけだ。


そして今年はMTFの1人が、どちらかといえば保守的な体質を持つNHKが全精力をかける国民的番組に、女性歌手として出演する。そこまで日本の社会は進んだのだ。

なんだか、このような背景を改めて知ると中村中さんが紅白に出場したことは、すごいことだったんだなあって思った。日本はダメだダメだって聞くけど、日本って知らない間にどんどん進歩してるんじゃないか。やるじゃんNHK


悲しいことに、未だにイランでは同性愛者は死刑対象だし(sukotan.com - )、日本も昔は差別がひどかったと聞く。
ビジュアル系の元祖と言われる美輪明宏さんが、奇しくも今の中村中さんと同じ22歳(昭和32年)のとき、ホモセクシュアルであることを雑誌を通じてカミングアウトした途端、それまでの人気も急落し、「国賊」と罵られ見も知らぬ人から石を投げられたそうだ。今じゃこの人、自分のこと菩薩だとか言ってるけど(笑)


人の差別心ってそうなかなか消えるものじゃないから、同性愛者に対する考え方がこれだけ変わったことってすごいと素直に思う。中村中さんには頑張って欲しい。


これからの日本のこういった事情はどうなるんだろうか?


国賊、キモい」つって批難してきた過去を忘れたり、「オカマ」などの俗語を社会的にタブー視するといったことではいけないと私は思う。


なぜなら、人間の差別心はどうあがこうが、完全に消えることはないからだ。絶対にそれはない。


だからこそ、ひとそれぞれの恋愛に対して、それぞれが自分の倫理で判断できるようレベルアップしていくべきだ。そうなれば、同性愛者もそうでない人も窮屈な気持ちにならないで済むんじゃないかな。


オカマだと自分を卑下するオネエより、「オカマ」である誇りを持っている「女性」を、私は尊敬したいと思います。